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負荷試験コラム
2026.02.27
非常用発電機

非常用発電機とは?種類・設置義務・点検義務について徹底解説

この記事の目次

非常用発電機とは、自然災害などを原因とした停電時に、自動的に稼働して自家発電する装置を言います。

もし自然災害などの影響で建物が停電した場合、消防設備の不稼働による火災蔓延、工場生産ラインの停止、冷凍庫・冷蔵庫内の商品劣化、医療機器の停止など、様々な影響が危惧されます。これら停電の影響を可能な限り抑えるための設備が非常用発電機です。

非常用発電機には事業用と家庭用がありますが、ここでは事業用を前提に、非常用発電機の概要や必要とされている理由、関連法規等について解説します。

非常用発電機とは

非常用発電機とは、自然災害や事故などにより電力会社からの電源供給が停止した際、自動的にエンジンが起動して建物へ電源供給する非常用装置を言います。

消防法や建築基準法などの規定で非常用発電機の設置が義務付けられている建物もありますが、近年ではBCP(事業継続計画)の観点から、設置義務のない建物においても非常用発電機が広く普及しつつあります。

【参考】
総務省消防庁「自家発電設備の基準」

いずれの目的であれ、非常用発電機には停電時の確実な動作が求められるため、定期的なメンテナンスや点検は不可欠。特に消防法で設置が義務付けられた非常用発電機については、停電時におけるその動作が直接人の命に関わることから、点検に関わる規定が厳格に設けられています。

非常用発電機が必要とされる理由

東日本大震災では、主に東北電力管内で広く停電が発生しました。電力供給が80%まで復旧したのは震災から3日後。完全復旧までには約3か月を要しています。熊本地震でも広い地域で停電が発生。完全復旧までに約5日を要しました。近い将来の南海トラフ地震が予想されている中、震災をはじめとした自然災害による停電への対策は急務となっています。

とりわけ重要とされる停電時の対策が、非常用電源供給による火災対策。建物内に設置されている多くの消防設備には、電源がなければ稼働しないものが少なくありません。停電によって消防設備が稼働しなければ、直接人の命に関わる深刻な被害に至る可能性があるほか、延焼による被害拡大にもつながりかねません。これら被害を最小限に抑えるため、いかに非常用発電機の設置が重要であるかを理解できるでしょう。

近年ではBCP(事業継続計画)の一環としても非常用発電機が普及している

非常用発電機のもっとも重要な目的は、消防法が定める防災対策にありますが、近年ではBCP(事業継続計画)の一環としての非常用発電機も広く普及しています。

BCP(事業継続計画)とは、企業をはじめとしたあらゆる施設における緊急事態への備えのことです。自然災害、パンデミック、テロなどの緊急事態は、予期せず発生します。BCP対策において非常用発電機は、事業継続性を担保するための中核設備として位置付けられています。

▶ BCPと非常用発電機の関係を詳しく見る

いかなる緊急事態が生じたとしても、被害を最小限に抑えるために日頃から対策を検討しておくことがBCP(事業継続計画)。その計画の一環として、非常用発電機の設置は大変重要視されています。

なぜBCP(事業継続計画)で非常用発電機が重要視されているのか

BCP(事業継続計画)で非常用発電機が重要視される理由は、災害等で電源供給が停止した際でも、事業の継続を可能とするためです。例えば、何らかの理由で企業への電源供給が停止した場合、次のような事態が想定されるでしょう。

▶ 非常用発電機のBCP対策について詳しく解説

  • 工場の生産ラインが停止して営業が続けられない
  • 消防設備が稼働せず火災被害が拡大する
  • 冷凍後・冷蔵庫の中の商品が劣化して廃棄対象となる
  • 通信が困難となり社内や取引先との意思疎通ができなくなる
  • 照明がダウンし、場所によっては真っ暗になってパニックが起こる
  • 冷暖房が停止し、屋内環境が一気に悪化する(熱中症のリスクあり)
  • 医療機器が停止し、患者の命に関わることもある
  • エレベーター・エスカレーターが停止し、高層施設内における上下移動が大変になる

停電による業務への影響は計り知れません。
仮に、あなたの勤務先で1週間の停電が生じたことをイメージしてみてください。業務に対し、どれほど大きな影響が及ぶでしょうか?もとより、電源復旧後の事業継続は可能でしょうか?

非常用発電機の種類と比較

非常用発電機は駆動方式によって主に3種類に分類されます。施設の規模・用途・設置環境に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。

ディーゼル発電機

ディーゼルエンジンを使った発電機で、非常用発電機として最も広く普及しているタイプです。燃料(軽油・重油)の調達が比較的容易で、構造がシンプルなためメンテナンスもしやすい特徴があります。中小規模の施設から大型施設まで幅広く対応でき、導入コストも比較的抑えられます。

向いている施設: オフィスビル・商業施設・マンション・病院・学校など

  • 主な燃料:軽油・重油
  • 出力範囲:数kVA〜数千kVA
  • メンテナンスコスト:中程度
  • 騒音・振動:やや大きい
  • 設置スペース:コンパクト〜中型
  • 起動時間:速い(40秒以内)
  • 主な用途:中小規模施設全般

ガスタービン発電機

ジェットエンジンと同じ原理で発電するタイプです。出力が大きく、振動が少ないため大型施設での導入に適しています。一方、導入コストやランニングコストが高く、専門的なメンテナンスが必要です。

向いている施設: 大型データセンター・空港・大規模プラント・超高層ビルなど

  • 主な燃料:軽油・灯油・ジェット燃料
  • 出力範囲:数百kVA〜数万kVA
  • メンテナンスコスト:比較的高い
  • 騒音・振動:騒音は大きいが振動は少ない
  • 設置スペース:大型
  • 起動時間:やや遅い
  • 主な用途:大規模施設・空港・プラント

ガスエンジン発電機

都市ガスやLPGを燃料とする発電機です。燃料の備蓄が不要で、都市ガス供給エリアであれば長時間の運転が可能です。騒音・振動が比較的少なく、環境への負荷も軽減できます。ただし、ガス供給が止まった場合は稼働できないリスクがあります。

向いている施設: 都市部のビル・病院・福祉施設など

  • 主な燃料:都市ガス・LPG
  • 出力範囲:数十kVA〜数千kVA
  • メンテナンスコスト:中〜高い
  • 騒音・振動:比較的静か
  • 設置スペース:中型
  • 起動時間:中程度
  • 主な用途:都市ガス供給エリアの施設

▶ 非常用発電機の種類別詳細解説

消防法で非常用発電機の設置を義務付けられている施設

消防法では、不特定多数の人が出入りする延べ床面積1,000㎡以上の特定し防火対象物に対し、非常用発電機の設置を義務付けています。

消防法で非常用発電機の設置が義務付けられている主な施設

「不特定多数の人が出入りする延べ床面積1,000㎡以上の特定し防火対象物」に該当する商業施設や工場、高齢者福祉施設、学校、ホテル、マンション、オフィスなどが、消防法で非常用発電機の設置を義務付けられています。

消防法が非常用発電機の設置を義務付ける理由

上記のような施設には、火災発生時の被害を可能な限り抑える目的で、消火栓設備や自動火災報知機、スプリンクラー、ガス漏れ火災報知器など、様々な防災設備が設置されています。

これら防災設備は、電源がなければ稼働しないものが大半。もし地震や台風などの影響による停電時に火災が発生した場合でも、これらの設備が有効に働くよう、消防法では規定の施設に対して非常用発電機の設置を義務としています。

消防法以外にも非常用発電機に関する規定を設けている法令がある

電気事業法

電気事業法では、一定の要件を満たした非常用発電機を「電気工作物」とし、設置した場合には正しく運用・維持・管理・点検するよう定めています。

建築基準法

建築基準法では、常に建物を適法な状態に維持するよう建物の所有者に求めています。建物に非常用発電機を設置した場合、その非常用発電機も適法な建物維持の対象とし点検を義務付けています。

大気汚染防止法

大気汚染防止法では、一定の条件を満たした非常用発電機をばい煙発生施設とし、届出などの規制対象としています。

火災予防条例

火災予防条例では、一定の要件を満たした非常用発電機の設置者に対し、消防署への各種届出を義務付けています。

消防法による非常用発電機の点検義務

停電が発生した際でも迅速に消防設備が稼働するよう、消防法で非常用発電機の設置が義務付けられた施設では、非常用発電機の定期的な点検(機器点検・総合点検)が義務付けられています。

この総合点検の中に負荷試験が含まれていますが、以前は負荷試験の実施周期が「1年に1回」だったことに対し、平成30年の消防法改正により、予防的な保全策が行われている施設では「6年に1回」となりました。

予防的な保全策とは、非常用発電機の不具合を予防するための保全策のこと。具体的には、「総務省消防庁・点検要領第24・別紙2・運転性能の維持に係る予防的な保全策」(※)をご確認ください。

【参考】
※総務省消防庁・点検要領第24・別紙2・運転性能の維持に係る予防的な保全策

【まとめ】非常用発電機の確実な稼働は大きな社会的責務

消防法で非常用発電機の設置を義務付けられるほどの建物は、建物の目的がなんであれ、実質的に社会インフラの一部と言っても過言ではありません。その意味では、BCP(事業継続計画)として設置される非常用発電機とは異なり、非常時の確実な稼働は大きな社会的責務となります。

非常時の確実な稼働のためには、定期的に受ける負荷試験が極めて大事なプロセス。異常な自然災害が多発しつつある昨今、改めて非常用発電機の設置趣旨を十分に理解のうえ、専門会社とともに適切な運用を推進しましょう。

 非常用発電機の負荷試験についてや負荷試験を行える資格について詳しくはこちら

よくある質問(FAQ)

Q. 非常用発電機の設置は義務ですか?どんな建物が対象ですか?

消防法では、延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物(商業施設・病院・ホテル・高齢者福祉施設・学校など)に対し、非常用発電機の設置を義務付けています。また、建築基準法・電気事業法でも関連する規定があります。設置義務の有無は施設の用途・規模・構造によって異なるため、管轄の消防署または専門業者にご確認ください。

▶ 設置が必要な建物の一覧はこちら

Q. 非常用発電機とUPS、どちらが必要ですか?

用途が異なるため、多くの施設では両方の導入が推奨されます。UPSは停電発生の瞬間から電力を供給し、コンピューターやサーバーなど瞬断に弱い機器を守ります。非常用発電機は燃料がある限り長時間の電力供給が可能です。「UPSで瞬断をつなぎ、発電機が起動したら切り替える」構成が、より信頼性の高い停電対策となります。

▶ UPSとの違いを詳しく解説

Q. 非常用発電機の点検はどのくらいの頻度で必要ですか?

消防法に基づき、機器点検は6ヶ月に1回総合点検(負荷試験を含む)は1年に1回の実施が義務付けられています。ただし、一定の予防的保全策が実施されている施設では、負荷試験の実施周期が6年に1回に緩和される場合があります。点検は有資格者または専門業者に依頼してください。

▶ 点検基準の詳細はこちら

Q. 非常用発電機の導入費用はどのくらいかかりますか?

導入費用は発電機の容量・種類・設置環境によって大きく異なります。機器本体の費用に加えて、基礎工事・電気工事・燃料配管工事・試験調整費用などが必要です。また、導入後も定期点検・燃料費・部品交換などのランニングコストが発生します。施設の状況に合わせた費用のご案内は、専門業者へお問い合わせください。

著者

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 次長

備瀬元博

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