【この記事でわかること】
- 非常用発電機に使われる燃料の種類
- 軽油・A重油・ガソリン・LPガスの扱い方の違い
- 非常時に必要な燃料備蓄量の考え方
- 消防法上の指定数量と保管時の確認項目
- 燃料劣化と点検・負荷試験で見直すべき項目
非常用発電機に使われる燃料の種類
非常用発電機の燃料は、発電機の種類や出力、設置場所、メーカー仕様によって異なります。建物設備として使われる非常用発電機では、軽油やA重油を使う機種が多くあります。小型発電機では、ガソリンやLPガスを使うものもあります。
燃料を選ぶ際は、価格や入手しやすさだけで決めず、発電機の仕様書、保管条件、消防法や自治体基準、非常時の補給ルートまで含めて判断します。主な燃料ごとの見方は次のとおりです。
- A重油:大型の非常用発電機や自家発電設備で使われることがあります。保管状態、低温時の流動性、タンク管理まで点検対象に含めます。
- 軽油:ディーゼル発電機で使われる代表的な燃料です。入手しやすい一方、備蓄量が増える場合は消防法上の数量確認が必要です。
- ガソリン:小型発電機で使われることがあります。引火性が高いため、保管量と容器の管理を厳格に見る必要があります。
- LPガスなど:小型・用途限定の発電機で使われることがあります。対象機種、設置環境、供給方法を事前に把握しておきます。
A重油は大型設備で使われることが多い燃料
A重油は、大型の非常用発電機や自家発電設備で使われることがある燃料です。軽油よりも粘度が高く、保管環境や気温によって扱い方が変わる場合があります。
採用している機種がA重油に対応しているか、メーカー仕様と現場の保管条件を照らし合わせます。寒冷地や長期間保管する施設では、流動性や燃料タンクの状態も点検項目に入れます。
軽油はディーゼル発電機で使われる代表的な燃料
軽油は、ディーゼル式の非常用発電機で使われる代表的な燃料です。調達しやすい反面、保管量が増えると消防法上の数量確認や届出の検討が必要になります。
燃料が足りるかだけでなく、どこから、どのタイミングで補給できるかまで計画に入れます。災害時は交通網や供給体制が乱れるため、平常時から調達先と補給方法を決めておくと、停電時の初動が早くなります。
ガソリンやLPガスは小型機・用途限定で使われる
小型の発電機では、ガソリンやLPガスを使う機種もあります。ただし、建物設備として設置されている非常用発電機と、持ち運び型の小型発電機では、用途も管理方法も異なります。
ガソリンは引火性が高く、保管量や容器の扱いにも注意が必要です。LPガスを使う発電機もありますが、対象機種、供給方法、設置環境を個別に見ます。大型施設の非常用電源を検討する場合は、既設機器の仕様書、燃料区分、法令上の扱いを先にそろえます。
燃料は発電機の仕様書とメーカー基準に合わせる
非常用発電機の燃料は、発電機本体の仕様と切り離して決められません。対応していない燃料を使うと、出力低下、始動不良、部品不良につながる恐れがあります。
既設機器の燃料を変更する場合は、発電機の型式、メーカー仕様、燃料タンク、配管、周辺設備を整理し、出力や始動性に影響が出ないかを事前に照合します。燃料の種類を変えたい場合も、メーカーや点検業者へ事前に相談し、設備側に無理が出ない条件をそろえます。
非常時に必要な燃料備蓄量の考え方
燃料備蓄量は、発電機を何時間動かしたいかによって変わります。病院、介護施設、商業施設、工場、マンションなどでは、停電時に優先して動かす設備が異なるため、必要な燃料量も同じではありません。
まず、停電時に守る設備を決めます。防災設備、照明、給排水、通信、冷蔵・冷凍設備、医療機器、エレベーターなど、施設ごとの優先順位を一覧化します。そのうえで、発電機の消費量、想定運転時間、補給の可否を計算します。
何時間運転したいかを先に決める
燃料備蓄を考える際は、最初に運転時間を決めます。数時間の停電に備えるのか、長時間停電に備えるのかで、必要な燃料量は大きく変わります。
発電機に接続する設備が多いほど燃料消費量も増えます。停電時にすべての設備を動かすのではなく、防災設備、避難に必要な照明、通信、給排水など、施設ごとの優先順位を決めて燃料計画を立てます。
燃料消費量と補給ルートをセットで見る
燃料備蓄量は、タンク容量だけでは判断できません。発電機の燃料消費量、想定負荷、運転時間、災害時の補給ルートをセットで見ます。
たとえば、タンクに一定量の燃料があっても、災害時に補給できない場合は運転時間に限界があります。反対に、燃料を多く保管しようとすると、消防法や自治体基準、保管設備の条件が関係します。備蓄と補給の両方を計画に入れることで、現実的な運用に近づきます。
72時間稼働を目安にする場合の注意点
災害対策では、72時間分の備えが目安として語られることがあります。非常用発電機でも、長時間停電を想定して燃料を確保する考え方は有効です。
ただし、燃料を単純に多く置けばよいわけではありません。保管場所、タンク容量、消防法上の取扱量、劣化管理、災害時の補給ルートまで含めて計画します。施設の用途や地域のリスクに合わせて必要な運転時間を決め、その時間に合わせて備蓄量と補給体制を組み立てます。
燃料保管では消防法と自治体基準を確認する
軽油、重油、ガソリンなどは、消防法上の危険物として扱われます。一定量以上を保管・取り扱う場合は、危険物の規制に関する政令や自治体条例、所轄消防の運用に沿った確認が必要です。
代表的な指定数量として、ガソリンは200L、軽油・灯油は1,000L、重油は2,000Lが基準になります。実際の届出や許可の要否は、燃料の種類、数量、保管場所、タンク構造、自治体の基準によって変わります。
保管量を見る際は、次の順番で進めます。
- 使用燃料の種類を確認する
- タンク容量、貯蔵量、補給量を整理する
- 指定数量の何倍に当たるかを確認する
- 屋内、屋外、屋上、地下など設置場所を確認する
- 所轄消防へ届出・許可・設備基準の要否を相談する
燃料は危険物として扱われる
非常用発電機で使う燃料は、防災設備を動かすために必要なものですが、保管方法を誤ると火災や漏えいのリスクになります。燃料を保管する場合は、容器、タンク、換気、火気管理、漏えい対策を施設管理の一部として扱います。
とくにガソリンは引火性が高いため、小型発電機用に少量を備える場合でも、容器や保管場所に注意が必要です。建物設備の非常用発電機で使う軽油やA重油も、保管量が増える場合は所轄消防へ相談します。
指定数量と取扱量を確認する
消防法上の指定数量は、危険物の種類ごとに決まります。燃料をどれだけ保管・取り扱うかによって、届出や許可、設備基準の確認が必要になる場合があります。
複数の燃料を扱う施設では、それぞれの数量を別々に見るだけでなく、指定数量の倍数として合算する考え方が関係する場合があります。保管量を増やす前に、燃料種類、数量、タンク容量、補給頻度を一覧化し、所轄消防へ相談できる状態にしておきます。
タンク構造・設置場所・届出の要否を所轄消防へ確認する
燃料計画は、発電機本体の選定だけでは完結しません。タンク構造、保有空地、換気、漏えい対策、標識、消火設備など、施設側の条件も関係します。
屋内タンク、屋外タンク、地下タンク、屋上設置など、設置場所によって必要な基準が変わります。燃料を増やす場合は、発電機の稼働時間だけでなく、保管設備と法令確認を同時に進めます。
燃料は保管中にも劣化する
非常用発電機の燃料は、普段使わないまま長期間保管されることがあります。燃料は保管中にも酸化、水分混入、スラッジ発生などが起きる場合があり、フィルター詰まり、燃料噴射不良、始動不良につながります。
交換時期は、燃料の種類だけで一律に決めるより、保管環境、タンク状態、メーカー基準、点検結果をもとに判断します。固定年数だけで終わらせず、燃料状態を点検する流れを入れると安全です。
水分・スラッジ・酸化が始動不良につながる
燃料タンクに水分が混入したり、燃料が酸化したりすると、スラッジが発生することがあります。スラッジはフィルター詰まりや燃料噴射不良につながり、発電機の始動や運転を妨げます。
災害時に発電機が動かない原因を減らすには、燃料の量だけでなく、燃料の状態も点検します。タンク底部の水分、異物、変色、におい、フィルターの状態を記録しておくと、交換や清掃の判断に使えます。
交換時期は点検結果とメーカー基準で判断する
燃料の入れ替え時期は、保管環境、燃料の種類、タンク状態、メーカー基準によって変わります。温度差が大きい場所、湿気が入りやすい場所、長期間補給していないタンクでは、燃料劣化が進みやすくなります。
燃料をいつ交換するかは、点検結果とメーカー基準をもとに決めます。交換時期を決めた後も、年次点検や負荷試験のタイミングで、燃料の状態と燃料系統の動作をあわせて見ましょう。
非常用発電機の燃料管理は点検・負荷試験と一緒に見直す
燃料管理は、備蓄して終わりではありません。停電時に必要な設備へ電力を供給できるか、燃料は足りるか、燃料系統に異常はないかを、平常時の点検と負荷試験の中で見直しておく必要があります。
発電機を実際に運転すると、燃料の供給状態、異音、振動、排気、警報、出力の安定性を確認できます。点検記録に燃料の種類、タンク容量、残量、補給履歴、交換履歴、異常の有無を残しておくと、次回点検や災害時の判断に使えます。
当社では、非常用発電機の負荷試験、保守点検、修理・整備の相談を承っています。模擬負荷試験では、施設の電力供給を止めずに発電機へ負荷をかけ、運転状態を確認できます。燃料管理に不安がある場合も、発電機本体、燃料系統、点検記録、運転条件を確認しながら、必要な点検計画を組み立てます。
非常用発電機の燃料備蓄や燃料系統の点検を見直したい施設管理者さまは、発電機の型式、燃料の種類、タンク容量、前回点検日、想定運転時間をそろえてご相談ください。




