非常用発電機の負荷試験はなぜ必要?どこまでが義務なの?

非常用発電機

負荷試験はなぜ必要?

災害時の信頼性確保

非常用発電機は、災害時に電力会社からの供給が停止した場合、消火設備などの動力源として機能します。
このため、火災発生時などで電力供給が止まっても、スプリンクラーや消火栓などの初期消火施設が動作することが極めて重要です。
非常用発電機を設置しても、それが正常に作動するかどうかを確認するために定期的な検査が必要です。
単に設置するだけではなく、その機能が災害時に確実に発揮されることが求められます。

消防法に基づく基準

消防法では非常用発電機の負荷運転に関する具体的な基準が定められています。
これには、定格負荷で60分以上の連続運転が可能であること、燃料タンクが2時間以上の容量を持つこと、電圧の確立が40秒以内であることなどが含まれます。
これらの基準は非常時に発電機が必要な出力を発揮できるかどうかを確認するために重要です。

以上の点から、非常用発電機の負荷試験は、災害時の信頼性の確保、法的要件の遵守、および潜在的な法的責任を避けるために必要であり、重要な管理業務となっています。

参照:自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示1) | 告示

非常用発電機の負荷試験とは?

非常用発電機は、災害時に人命救助や復旧活動に不可欠な設備です。
そのため、危機管理の一環として、非常用発電機の定期的な点検が必要とされています。

負荷試験の周期を6年周期にするための条件とは

1.改正前の点検周期

  • 改正前は、非常用発電機の負荷試験が1年に1回必要でした。

2.改正後の点検周期

  • 平成30年6月の消防法施行規則等の改正により、特定の条件下で負荷試験の実施が6年に1回に延長されました。

3.延長条件

  • 6年周期に延長されるための条件は、「潤滑油等の交換など運転性能の維持に係る予防的な保全策が講じられている場合」です。
  • 予防的な保全策には以下の要件が含まれます:
    • 予熱栓、点火栓、冷却水ヒーター、潤滑油プライミングポンプがそれぞれ設けられている場合、1年ごとに確認が必要です。
    • 負荷運転により不具合が発生する部品の推奨交換年数が6年以上である必要があります。

4.予防的な保全策がない場合

  • 予防的な保全策が講じられていない場合、従前と同様に1年に1回の負荷試験点検または内部観察点検が必要となります。

負荷試験の種類

  1. 機器点検
    機器点検では、非常用発電機に負荷をかけずに稼働させ、正常に運転できているかを確認します。
    具体的には、設置状況、始動装置、制御装置、冷却水タンク、排気筒など、合計18項目を点検します。
    これにより、非常用発電機の構成部品が正常に保たれているかをチェックし、未然にトラブルを防ぐことが可能です。
  2. 総合点検
    総合点検では、非常用発電機に定格回転速度及び定格出力の30%以上の負荷で、必要な時間連続運転を行い異常の有無を確認します。
    点検項目には、自家発電設備の接続部接続部、保護装置、運転性能、切替性能などの合計7項目が含まれます。
    非常用発電機の運転中に漏油、異臭、不規則音、異常振動、発熱などがなく、運転が正常であるかを判定します。
    総合点検は災害発生時を想定して実施され、非常用発電機の全体的な機能と性能を確認することを目的としています。

これらの点検は、非常用発電機がいつでも正常に機能し、災害時に信頼できる電力源として作動することを保証するために不可欠です。

参照:消防用設備等の点検報告制度について
参照:自家発電設備の点検方法が改正されました|消防庁

負荷試験の方法

非常用発電機の負荷試験には、主に以下の方法があります。

1.実負荷試験

  • 実負荷試験は、非常用発電機と連動している施設全体の設備を稼働させ、その負荷状態を確認する試験です。この試験では、建物内の設備を使用しながら非常用発電機の性能をテストし、定格出力の30%以上の負荷を必要な時間、連続運転を行い確認をします。
  • しかし、試験中には施設内で一時的な停電や瞬停(瞬間的な停電)が発生することがあり、特にエレベーターやポンプなどの設備では定格出力の30%以上の負荷をかけ続けることが困難な場合があります。

2.模擬負荷試験

  • この試験では、非常用発電機と連動している各設備を一時的に切り離し、専用装置を取り付けて行います。
  • 模擬負荷試験は、実負荷試験と異なり施設全体に停電や瞬停が発生せず、食品を冷蔵・冷凍保存している施設や医療機関などでも通常営業状態で点検可能です。また、少人数で行えるため、施設従業員に混乱を招く恐れが少ないです。

3.内部観察

  • 平成30年の消防法改正により、負荷試験の代わりに「内部観察」という方法が追加されました。
  • 内部観察は、非常用発電機を分解して部品を目視でチェックする方法で、摩耗や傷が見つかった場合に部品交換を行います。この方法は、極めて高度な専門的知識と技術を必要とします。

非常用発電機の負荷試験:必要性と義務の範囲

  • 非常用発電機の負荷試験は、災害時の信頼性を確保するために必要です。
  • 消防法に基づき、定格容量の30%以上の負荷で必要な時間、連続運転し確認することが定められています。
  • 平成30年の法改正により、特定条件下では点検周期が6年に1回に延長されました。
  • 延長条件には、潤滑油等の交換など運転性能の維持に関連する予防的な保全策が講じられていることが含まれます。
  • 負荷試験には実負荷試験、模擬負荷試験、内部観察といった種類があります。
  • これらの点検は、非常用発電機が災害時に確実に機能し、信頼できる電力源としての役割を果たすために重要です。
著者
市岡洸

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 主任

市岡洸

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