非常用発電機の負荷試験は、消防設備士または消防設備点検資格者の有資格者しか行えません。
ここでは、これら2つの資格の概要や消防法が定める非常用発電機の点検内容、負荷試験に関するポイント、資格に関連した消防庁からの注意喚起などについて解説します。
この記事の目次
【負荷試験を行える資格①】消防設備士
消防設備士とは、各種消防設備の設置工事や点検整備を行うことが認められた国家資格。乙種と甲種の2種類があり、乙種は消防設備の点検・整備のみを行うことが可能で、甲種は点検・整備に加えて設備の設置や交換作業を行うことも可能です。
乙種を受験には特別な条件がありませんが、甲種の受験には「乙種に合格後2年以上の実務経験」など、条件が指定されています。甲種は乙種の上位資格になると考えて良いでしょう。
【負荷試験を行える資格②】消防設備点検資格者
消防設備点検資格者とは、消防設備の適正な維持・管理を行うことが認められた国家資格。消防設備士の有資格者で、かつ消防設備点検資格者講習を受講した人に受験資格が与えられます。消防設備士の上位資格と考えて良いでしょう。資格取得後は、5年ごとに再講習を受ける必要があります。
なお、消防設備点検資格者には第一種と第二種があり、それぞれで点検可能な設備の種類が異なります。
非常用発電機の点検内容に関する消防法の規定
消防法では、非常用発電機の点検義務がある施設に対し、点検基準として「機器点検」と「総合点検」を課しています。それぞれの概要を確認してみましょう。
機器点検とは
機器点検とは、非常用発電機の動作確認や異音・損傷の有無、排気状況などの検査のこと。点検は無負荷の状態で行います。
機器点検は6か月に1回の頻度で行うよう求められています。
総合点検とは
総合点検とは、非常用発電機の動作状態を総合的に行う検査のこと。検査項目の中に「運転性能」があり、この項目において「負荷試験または内部観察」のどちらかを行う必要があります。
総合点検は1年に1回の頻度で行うよう求められていますが、後述する「予防的な保全策」を行っている施設については、負荷試験の実施頻度が「6年に1回」と緩和されています。
負荷試験に関するポイント
消防設備士または消防設備点検資格者しか行えない負荷試験について、その概要を確認しておきましょう。
負荷試験とは
負荷試験とは、実際に非常用発電機へ負荷を掛けて、その稼働状況を確認する検査です。総合点検の際に選択される点検方法の1つで、機器点検の際に行われる無負荷試験(エンジンの空ふかしによる試験)と区別されています。
負荷試験には実負荷試験と模擬負荷試験がある
負荷試験には実負荷試験と模擬負荷試験の2種類があります。
実負荷試験とは、非常用発電機と連動している全設備を同時に稼働させて行う試験のこと。模擬負荷試験とは、非常用発電機と連動している設備を個別で切り離して行う試験のこと。
消防法では、どちらを選択しても問題ありません。
平成30年6月1日の消防法改正により負荷試験の内容が変更に
かつて負荷試験の頻度は1年に1回とされていましたが、平成30年6月1日の消防法改正により、「予防的な保全策」を行っている施設については6年に1回の頻度へと緩和されました。
なお同改正では、負荷試験の代わりに「内部観察」を選択できる方法も追加されました。
予防的な保全策とは
予防的な保全策とは、非常用発電機の運転性能維持を目的とした定期的な機器・部品の確認・交換のこと。具体的には消防庁公式リーフレットを参照してください。
参照:消防庁公式リーフレット
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/items/h30_leaflet01.pdf
負荷試験に関する不適切な営業勧誘に注意
負荷試験は一定の有資格者しか行うことができませんが、昨今、無資格者でも負荷試験を行えるとの内容に絡めた不適切な営業勧誘が見られているため、消防庁では強く注意喚起を行っています。
不適切な営業勧誘の主な内容は、「検査キット(数十万円)を購入すれば無資格者でも負荷試験を行える」「負荷試験を1本受注したら数十万円の収益を得られる」というもの。
繰り返しますが、負荷試験は有資格者しか行えません。不適切な営業勧誘に遭った場合には、毅然とした態度で勧誘を断りましょう。
【まとめ】負荷試験は実績豊富な信頼できる業者へ依頼を
消防法に基づく非常用発電機の負荷試験を行える2つの資格(消防設備士・消防設備点検資格者)、有資格者が行う負荷試験の概要、負荷試験に関連した不適切な営業勧誘などについて解説しました。
非常用発電機の負荷試験は、大変高度な専門性が求められる作業です。有資格者に依頼することはもちろんのこと、負荷試験の実績が豊富な信頼できる業者に依頼することが大切です。