非常用発電機の負荷試験の種類について紹介

非常用発電機

自然災害などの影響による急な電源供給停止に備え、消防法では非常用発電機の負荷試験を行うよう定めています。負荷試験の種類は、実負荷試験と模擬負荷の2つ。
どちらを選択しても法的には問題ありません。

ここでは、負荷試験の概要、実負荷試験と模擬負荷試験の特徴・注意点などを解説しています。

非常用発電機の負荷試験とは

非常用発電機の負荷試験とは、定期的に非常用発電機の試運転を行い、機器の不具合の有無を確認する試験を言います。

非常用発電機は、自然災害などの影響による停電が発生した際、人や建物への被害を抑えるための大切な設備。

そのような緊急事態は前兆なく突如として発生するため、いつ何時でも非常用発電機が正常稼働するよう、日頃からの機器の点検は不可欠です。そのための点検が負荷試験となります。

かつて負荷試験は「1年に1回」の頻度で行うよう消防法で規定されていましたが、平成30年6月1日の消防法改正により、負荷試験に関連する規定が大きく変更されました。主な変更内容を確認しておきましょう。

消防法改正による負荷試験の主な変更点

  1. 負荷試験に代えて「内部観察」という点検方法も可能となった
    非常用発電機の点検方法として、「負荷試験のみ」という規定が「負荷試験または内部観察」に変更となりました。新たな点検方法が認められた形です。詳細は後述します。
  2. 負荷試験または内部観察は、条件により6年に1回の実施でも認められることになった
    負荷試験または内部観察の実施頻度について、かつては1年に1回行うよう義務付けられていましたが、消防法改正により「予防的な保全策(※)が講じられている場合」には6年に1回の頻度へ緩和されました。

※予防的な保全策
非常用発電機の不具合を予防するために行う確認・交換作業のこと。具体的には消防庁公式リーフレットを参照してください。
参照:消防庁公式リーフレット
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/items/h30_leaflet01.pdf

  1. ガスタービンによる非常用発電機の負荷運転は不要となった
    消防法改正前は、あらゆる原動機のタイプについて負荷試験が必要とされていましたが、改正後、ガスタービンを原動機とする非常用発電機については負荷試験が不要となりました。

実負荷試験の特徴

非常用発電機の負荷試験には、実負荷試験と模擬負荷試験の2種類があります。
まずは、実負荷試験の概要や特徴・注意点を見てみましょう。

実負荷試験とは

実負荷試験とは、施設内で非常用発電機と連動している全ての設備を同時に稼働させながら行う点検を言います。

実負荷試験の特徴

消火栓やスプリンクラー、エレベーターなど、非常用発電機と連動している各設備の稼働状態を同時に確認できることから、実際に自然災害等による停電が発生した際と同様の状況下で施設全体の電源供給状況を確認できます。

非常用発電機と個別の設備の連動・稼働状況だけではなく、全体の設備の連動・稼働状態も確認できることから、施設側としては心理的な安心感を得られるでしょう。

実負荷試験の注意点

非常用発電機と施設全体の各設備との連動・稼働状態を確認する以上、一時的に施設内が停電または瞬停(瞬間的な停電)します。

そのため、生鮮食品などを冷蔵・冷凍保存している施設、常時電源が必要な医療機器を使用している施設、不特定多数の人が出入りする施設(デパートやホテルなど)では、実負荷試験に先立って周到な実施計画を立てなければならないでしょう。

また、実負荷試験の実施当日には、各設備がある場所へ専門の人員を配置しなければなりません。一時的とは言え、点検業者から多くの人員を招く必要があり、当日は施設全体での大掛かりな作業になることも承知しておく必要があるでしょう。

消防法が定める負荷率を安定的に得られにくい点も、実負荷試験の注意点とされることがあります。

模擬負荷試験の特徴

次に、模擬負荷試験の概要・特徴・注意点を見てみましょう。

模擬負荷試験とは

模擬負荷試験とは、非常用発電機と連動している各設備を一時的に切り離し、それぞれの設備に専用装置を取り付けて行う点検を指します。

模擬負荷試験の特徴

各設備を個別で点検する方法なので、実負荷試験とは違い、施設全体に停電や瞬停が発生することはありません。正しい計画のもとで行えば、食品を冷蔵・冷凍保存している施設や医療機関、不特定多数の人が出入りする施設でも、通常営業の状態で点検することが可能です。営業を一時中断する必要がないことから、機会損失が生じることもありません。

また、模擬負荷試験は最低2名の人員で行えるため、実負荷試験のような大掛かりな作業とはなりません。施設従業員に混乱を招く恐れもないでしょう。

消防法が求める負荷率を安定的に得られる点も、模擬負荷試験の特徴と言われています。

模擬負荷試験の注意点

模擬負荷試験を行うにあたり、特別に注意しておきたい点はありません。模擬負荷試験は、実負荷試験のデメリットを抑えながら行われる点検方法なので、現状、大きなデメリットはないと考えて良いでしょう。

なお、非常用発電機と全設備との連動・稼働状態を確認したい場合には、負荷試験とは種類の異なる確認作業を行うことになります。

【参考】負荷試験の代わりに「内部観察」で点検することも可能

平成30年6月1日の改正消防法により、従来の負荷試験を「内部観察」という方法に代えても良いとする規定が追加されました。

内部観察とは

内部観察とは、簡単に言えば非常用発電機を分解して部品を目視でチェックする方法です。チェックした結果、摩耗や傷が見つかった場合には部品交換をします。

シリンダーやコンプレッサー、タービンなどの状況確認のほか、潤滑油や冷却水の分析も必要です。

内部観察の注意点

負荷試験に新たな代替方法が認められた点では、大変画期的な法改正です。

ただし、負荷試験が非常用発電機の正常運転を確認する作業であることに対し、内部観察は機器の分解を伴う各部品の点検作業となります。

そのため、内部観察を行うためには、極めて高度な専門的知識と技術が求められます。負荷試験に代わって内部観察を採用する予定の施設については、業者選びを慎重に行う必要があるでしょう。

【まとめ】各施設に応じた適切な点検方法の検討・選択を

消防法で定められている非常用発電機の点検方法について、消防法改正のポイントや負荷試験の種類(実負荷試験・模擬負荷試験)、負荷試験に代わって選択できる内部観察について解説しました。

負荷試験に代わって内部観察という選択肢が登場したものの、作業の専門性や手間などを考え、従来通りの負荷試験を選択する施設が多くなると思われます。

負荷試験には実負荷試験と模擬負荷試験の2種類があり、どちらを選択しても法的には問題ありません。それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを考慮の上、施設にとって適切な点検方法を検討・選択しましょう。

著者
備瀬元博

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 次長

備瀬元博

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