一定の要件に該当する非常用発電機については、各種法令により定期的な点検が義務付けられています。非常用発電機は専門性の高い装置となるため、素人が適切な点検をすることは困難です。
定められた資格を持つ専門技術者のみが、非常用発電機の定期的な点検を行えるものと規定されています。
ここでは、消防法・建築基準法・電気事業法の各規定に基づき、非常用発電機の定期点検を行える資格の種類、および資格等に関連する不適切な営業勧誘情報についてご紹介しています。
この記事の目次
消防法の定期点検を行うために必要な資格
消防法令では、次の資格を持つ技術者のみが定期点検を行えるものと規定されています。
- 消防設備士
- 消防設備点検資格者
消防設備士とは、消防設備の設置工事・点検整備を行える国家資格で、資格取得のためには実務経験が必要です。
消防設備点検資格者とは、消防設備の適切な維持・管理を行える国家資格。消防設備士の有資格者が受験資格を与えられます。
建築基準法の定期点検を行うために必要な資格
建築基準法令では、次の資格を持つ技術者のみが定期点検を行えるものと規定されています。
- 一級・二級建築士
- 建設設備検査員
- 特定建築物調査員
- 昇降機等検査員
- 防火設備検査員
一級・二級建築士は防火設備や特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機などの点検を総合的に行うことができます。それら以外の有資格者については、資格分野に限定された検査のみを行うことになります。
電気事業法の定期点検を行うために必要な資格
電気事業法令では、次の資格を持つ技術者のみが定期点検を行えるものと規定されています。
- 電気主任技術者
電気事業法では、非常用発電機を含めた一定の電気設備がある施設に対し、電気設備の管理を行うための保安監督者を置くよう義務付けています。この保安監督者になるために必要な資格が電気主任技術者です。
【消防庁からの注意喚起】負荷運転に関する不適切な営業勧誘
消防法では、一定の条件に該当する非常用発電機に対して負荷運転(定期点検の一種)を課していますが、この負荷運転に関し、「点検用キットを購入すれば無資格者でも負荷運転業務ができる」という不適切な営業勧誘の事例が見られています。
不適切な営業勧誘の例
特定の団体などが開催する講習を受け、かつ同団体から点検用キット(数十万円)を購入すれば、無資格者でも消防法に基づく負荷運転業務を行えるとする勧誘。負荷運転業務を受注した場合、1回の点検で数十万円の報酬を得られると説明しているようです。
消防法により非常用発電機の設置が義務付けられている建築物については、有資格者(消防設備士または消防設備点検資格者)のみしか負荷運転を行えません。不適切な勧誘には十分に注意しましょう。
その他の不適切勧誘にも要注意
上記のような事例のほかにも、次のような説明から不適切な営業勧誘につなげている事例が見られています。あわせてご注意ください。
- 「消防庁・消防本部からの依頼で負荷運転に来ました」
- 「負荷運転を実施しないと1億円の罰金が適用されますよ」
- 「東日本大震災では、負荷運転未実施の発電機の多くが作動しませんでした」
- 「負荷運転を実施しないと違反対象物として公表されますよ」
いずれも不適切な営業勧誘につなげるための入口であるとして、消防庁では強く注意喚起を行っています。
【まとめ】実績・信頼のある業者に定期点検を依頼すれば安心
非常用発電機は、非常に高度な技術を搭載した機械装置です。専門的な知識を持つ有資格者でなければ、法令に則った定期点検はできません。法令での決まりである以上、もし無資格者が定期点検を行ったとしても、点検結果は無効となる可能性が高いでしょう。
不適切な営業勧誘の事例があることにも注意し、実績のある業者、信頼のある業者に定期点検を依頼するようおすすめします。