非常用発電機を設置・運用には様々な法令が関与しています。
ここでは、非常用発電機の設置基準や届出、点検、報告などに関する法令の中から、特に注意しておきたい主な項目をご紹介します。
この記事の目次
設置基準に関する法令
消防法と建築基準法では、以下の基準に該当する場合に非常用発電機を設置するよう義務付けられています。
消防法
不特定多数の人が出入りする大型施設のうち、一定の基準に該当するものについては、消防法の規定により非常用発電機の設置が義務化されています。火災発生により停電となった場合でも、スプリンクラーや消火栓設備、火災警報器などの電源を必要とする消防設備を正常に稼働させるためです。
具体的な設置施設としては、大型商業施設、病院、高齢者福祉施設、学校、ホテル、工場など。
建築基準法
建築基準法による一定の基準に該当した建物については、非常用発電機の設置が義務付けられています。
火災発生により停電になった場合でも、非常用昇降機や排煙設備、照明装置などの電源を必要とする建物設備を正常に稼働させるためです。
具体的な設置施設としては、映画館、病院、ホテル、旅館、共同住宅、学校、百貨店、高齢者福祉施設など。
届出に関する法令
非常用発電機を設置した施設は、以下の法令に基づいて届出を行わなければなりません。
消防法
防災用・保安兼用に関わらず、非常用発電機を設置した際には所轄の消防署へ、工事整備対象設備等着工届、消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届、危険物貯蔵所設置許可申請、発電設備設置届を提出する必要があります。
建築基準法
一定の基準に該当する非常用発電機を設置する際には、建築確認申請書に非常用発電機の関係図書を添付して提出する必要があります。
また、建築工事の完了検査が必要な場合には、完了検査申請書とあわせて、非常用発電機に関する各種記録の提出を求められることがあります。
電気事業法
一定出力以上の非常用発電機を設置する場合、電気主任技術者を専任するとともに、その届出が必要となります。設備の保安規定に関する届出も必要です。
大気汚染防止法
非常用発電機が「ばい煙施設」に該当する場合、工事着工事前届を提出する必要があります。提出後、60日間は工事を行えません。
火災予防条例
内燃機関を原動力とする発電機を設置する場合、または指定数量未満の危険物を貯蔵したり取り扱ったりする場合には、火災予防条例により消防機関への届出が必要となります。
点検基準に関する法令
消防法・建築基準法・電気事業法では、各法律の要件に該当する非常用発電機に対する定期的な点検義務を課しています。
消防法
年に2回の法定点検、6か月に1回の機器点検、1年に1回の総合点検(負荷試験)を行います。
なお、負荷試験は6年に1回としても構いませんが、その場合には、残りの5年で毎年「予防的な保全策」を行う必要があります。
建築基準法
建築物にある各種設備の点検の1つとして、建築基準法では非常用発電機を設置している施設に対し、その点検を課しています。
点検頻度は半年から1年に1回で、点検を行うのは一級建築士・建築設備検査員・防火設備検査員などの有資格者。点検結果は特定行政庁へ報告しなければなりません。
なお、非常用照明装置を点検する際には、建物全体が対象となります。そのため、すべての電球を設置した上で点検を行うこととなります。
電気事業法
電気事業法では、非常用発電機を設置した施設に対し、月次点検と年次点検の2つを義務付けています。
月次点検とは、月に1回の頻度で発電機等の外観の有無を確認する点検。年次点検とは、年に1回の頻度で自動起動装置・自動停止装置の稼働状態を確認したり、部品の接続箇所・設備と地面の接地面・接続部分の緩み、内部蓄電池の接続・漏れ・絶縁抵抗値などを確認したりする点検です。
報告に関する法令
一定の要件に該当する非常用発電機を設置している施設に対し、消防法と建築基準法では、以下の報告を義務付けています。
消防法
消防法では、非常用発電機を含めた消防用設備の定期点検後、点検結果を消防署長等に報告する規定しています。点検は消防整備士・消防設備点検などの有資格者が行います。
昭和49年の改正消防法により報告が義務付けられました。
建築基準法
建築基準法に基づく定期点検(半年から1年に1回の頻度)を行った場合には、その点検結果を特定行政庁へ報告することと規定されています。
【まとめ】専門家に相談してもれのない準備・対応を
非常用発電機に関連する法令について、網羅的に概要をご紹介しました。
実際に非常用発電機を設置・運用する際には、より細かい規定に従う必要があります。専門家に相談の上、もれなく必要な準備・対応を進めていきましょう。