2022年時点の自家発電設備の点検方法とは?

非常用発電機

平成30年6月1日の消防法改正により、非常用自家発電設備の点検方法について大きなルール変更がありました。

ここでは、変更内容や点検項目のポイント、点検方法の選択肢などについて詳しく解説しています。

自家発電設備の点検方法改正に関する4つのポイント

平成30年6月1日の消防法改正により、非常用自家発電設備の負荷試験に関するルールが大きく変更されました。消防庁の公式リーフレットを参照し、改正後の4つのポイントを確認してみましょう。

1. 負荷運転に代えて行うことができる点検方法として、内部観察等を追加

改正前の点検方法は「1年に1回の負荷試験のみ」とされていましたが、改正後は、負荷試験に代えて「内部観察等」も選択できるようになりました。

2. 負荷運転および内部観察等の点検周期を6年に1回へ延長

改正前の点検周期は「1年に1回」とされていました。
改正後は、「運転性能の維持に係る予防的な保全策が講じられている場合には6年に1回」という選択肢が加わりました。

3. 原動機にガスタービンを用いる自家発電設備の負荷運転は不要

改正前の点検範囲は「すべての自家発電設備に負荷試験が必要」でした。
改正後は、「原動機にガスタービンを用いる自家発電設備の負荷試験は不要」となりました。

4. 換気性能点検は負荷運転時でなく、無負荷運転時等に実施するように変更

改正前の換気性点検のタイミングは「負荷試験時に実施」。
改正後は、「無負荷試験時に実施」となりました。

予防的保全策と内部観察でチェックするポイント

平成30年6月の消防法改正前における自家発電設備の点検方法は、年に1回の負荷試験を行うことがルールとされていました。
ですが、自家発電設備の点検方法の選択肢は以下の3種類となりました。

  • 予防的保全策を毎年+負荷試験を6年に1回
  • 予防的保全策を毎年+内部観察を6年に1回
  • 負荷試験を毎年

消防法改正によって追加された「予防的保全策」と「内部観察」について、消防庁のリーフレットを参照の上、点検でチェックするポイントを確認してみましょう。

予防的保全策の点検ポイント

消防法改正によって選択的に設定された「予防的保全策」について、消防庁のリーフレットから点検ポイントを抜粋します。

  1. 予熱栓、点火栓、冷却水ヒーター、潤滑油プライミングポンプがそれぞれ設けられている場合は1年ごとに確認が必要です。
  2. 潤滑油、冷却水、燃料フィルター、潤滑油フィルター、ファン駆動用Vベルト、冷却水用等のゴムホース、パーツごとに用いられるシール材、始動用の蓄電池等についてはメーカーが指定する推奨交換年内に交換が必要です。

参照:消防庁公式リーフレット

内部観察の点検ポイント

内燃機関を原動機とする自家発電設備の点検については、負荷運転の他にも内部観察等による点検を選択できる形となりました。

内部観察の点検ポイントについて、消防庁のリーフレットから抜粋します。

  1. 過給器コンプレッサ翼及びタービン翼並びに排気管等の内部観察
  2. 燃料噴射弁等の動作確認
  3. シリンダ摺動面の内部観察
  4. 潤滑油の成分分析
  5. 冷却水の成分分析

参照:消防庁公式リーフレット

なお、内部観察を選択した場合には負荷運転が実施されない場合もあります。
その際の吸排気弁の点検については、自家発電設備は運転時間が短く部品の摩耗が少ないという理由で、消防設備としての点検は不要となります。

予防的保全策・内部観察・負荷試験の比較

改めて、平成30年の消防法改正により、非常用自家発電設備の点検方法の選択肢が次の3種類となりました。

  1. 予防的保全策を毎年+負荷試験を6年に1回
  2. 予防的保全策を毎年+内部観察を6年に1回
  3. 負荷試験を毎年

点検を受ける側としては、これらの選択肢のうちもっとも手間やコストがかからない方法を選択したいというのが本音でしょう。

以下、点検を受ける側の視点から、予防的保全策・内部観察・負荷試験、それぞれの特徴を確認してみます。

予防的保全策

「予防的保全策」という言葉から手間なく低コストで受けられる印象がありますが、実際には機械の分解や部品の取り換えなどが必要であり、決して手軽な作業ではありません。

コストは負荷試験よりも高くなる傾向があります。

内部観察

機械の分解や部品の取り換え、洗浄、調整など多くの手間がかかる点検方法です。

コストは予防的保全策や負荷試験よりも高くなる傾向があります。

負荷試験

予防的保全策や内部観察よりも手間なく低コストで行える傾向がありますが、負荷試験を行える業者は限られていることから、慎重に業者探しをする必要があります。

負荷試験とは?

非常用点検設備の点検方法における選択肢となる「負荷試験」。

以下、負荷試験の目的や種類を確認しておきましょう。

負荷試験の目的

一定の基準を超えた建築物では、建物内に消防設備を設置することが義務となっています。

もし地震などで停電が発生した際に同時に火災が発生した場合、消防設備が稼働せず火災延焼の可能性があるからです。

一方で、もし停電と火災が同時に発生したとしても、非常用自家発電設備が正常に稼働すれば、消防設備が稼働して火災の延焼リスクは抑えられます。
負荷試験は、停電と火災が同時に発生した場合の消防機能の維持を目的に、消防法にしたがって行われる点検となります。

負荷試験の方法には2種類ある

負荷試験の運転方法には、「疑似負荷運転(模擬負荷運転)」と「実負荷運転」の2種類があります。それぞれの特徴を見ておきましょう。

疑似負荷運転(模擬負荷運転)

疑似負荷運転(模擬負荷運転)とは、施設内で連携している各設備を一時的に切り離した上で、各設備に応じた専用装置で試験を行う運転方法です。

運転にともない施設内を停電させる必要がなく、少ない人員で試験を行えることなどがメリット。
一方で、各設備の同時試験を行えない点がデメリットとなります。

実負荷運転

実負荷運転とは、施設内で連携している各設備を同時に稼働させながら試験を行う運転方法です。

疑似負荷運転(模擬負荷運転)とは異なり、施設内の設備の同時試験を行える点はメリットです。
しかし、運転中に施設内を停電させる必要があることや、安定した負荷率を維持できないこと、試験に多くの人員を必要とすることなどがデメリットとなります。

著者
能又浩一

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 課長

能又浩一

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