非常用発電機の種類はどのように分類されるの?

非常用発電機

非常用発電機は防災専用、防災および保安兼用、保安専用の3種類に分類され、エンジンは主にディーゼルエンジンとガスタービンエンジンの2種類に分けられます。
この記事では主なメーカー16社を紹介しておりますので、施設の用途や燃料単価、発電効率などを考慮しながら選んでいきましょう。
点検義務は6年に1度の実施に変更されており、適切な点検方法を選ぶことが重要です。

非常用発電機の種類と選び方

非常用発電機を目的別で分けると、次の3種類に分かれます。

  • 防災専用の非常用発電機
  • 防災および保安兼用の非常用発電機
  • 保安専用の非常用発電機

それぞれの特徴を、くわしく見てみましょう。

防災専用の非常用発電機

防災専用の非常用発電機とは、停電の信号を検知してから40秒以内に、自動的に防災負荷へ電気を送る発電機を言います。
防災負荷とは、消防法で定められている消火設備のことです(スプリンクラー用電源など)。
防災専用の非常用発電機も、後述する防災および保安兼用の非常用発電機も、両方とも消防法で決められた点検を定期的に受けなければなりません。
防災専用の非常用発電機が設置されている主な場所は、ホテルや病院、百貨店、オフィスビル、ショッピングセンター、高齢者施設などです。
これらの施設には不特定多数の人が出入りするため、もし火災が発生した場合には、被害が大きくなる恐れがあります。
被害の拡大を防ぐため、防災専用の非常用発電機が大きな役割を果たすことになります。

防災および保安兼用の非常用発電機

防災および保安兼用の非常用発電機とは、上で説明した防災専用の非常用発電機とあわせて、保安用の負荷にも対応できるよう作られた発電機を言います。
保安用の負荷とは、例えば建築基準法で定められている冷蔵・冷凍装置、溶鉱炉、救命設備などへの給電です。
防災負荷に保安用の負荷も加わることになるので、防災専用の非常用発電機よりも容量が高く設定されています。

保安専用の非常用発電機

保安専用の非常用発電機とは、その建物の所有者が、停電が起きても電気を送り続けたいと考える設備に給電するための発電機を言います。
それらの設備に電気が送られなくても、不特定多数の人の命に関わるわけではないので、消防法で設置が義務付けられていません。
ただし、企業のBCP(事業継続計画)の観点からは、設置したほうが良いとされています。

例えば、大量の食品を冷蔵・冷凍保管している施設などで停電が発生した場合、冷蔵庫や冷凍庫に給電されなければ、すべての食品を廃棄することになるかもしれません。
そうなると、停電から復旧した際に、スムーズに事業を回復させることが困難になるでしょう。
食品の冷蔵や冷凍にかかわらず、それぞれの施設の必要に応じ、保安専用の非常用発電機が設置されています。
なお、保安専用の非常用発電機とはいえ、停電の際に動かなければ設置している意味がないので、防災用と同様に定期的なメンテナンスを行うことが大変重要です。

次に、非常用発電機をエンジン別で分けてみましょう。エンジン別で見た場合の非常用発電機は、大きく次の2種類に分類されます。

  • ディーゼルエンジン非常用発電機
  • ガスタービンエンジン非常用発電機

それぞれの特徴は次のとおりです。

ディーゼルエンジン非常用発電機

非常用発電機の多くは、ディーゼルエンジン式となっています。
小型から大型まで機種が豊富ですので、様々な施設に合った発電機が用意されています。
ディーゼルエンジン非常用発電機のメリットは、後述するガスタービンエンジン非常用発電機に比べて、本体価格や燃料単価が安いことです。
発電効率も良くメンテナンスが簡単なことも、ガスタービンエンジン非常用発電機より優れた面と言えるでしょう。
一方で、振動や騒音、煙の発生などが、ディーゼルエンジン非常用発電機のデメリットです。
機種を選ぶ時には、大は小を兼ねるという発想ではなく、施設の用途にちょうど良いものを選ぶようにしましょう。

ガスタービンエンジン非常用発電機

ディーゼルエンジン非常用発電機よりは数が少ないものの、ガスでエンジンを動かすタイプの非常用発電機も販売されています。
ディーゼルエンジン非常用発電機に比べると、騒音や振動、煙などが少ないことがメリットです。
ただし、決して発電効率が良いとは言えず、燃料単価も高くなることがデメリットです。
また、本体価格やメンテナンス費用も、ディーゼルエンジン非常用発電機に比べると高くなります。

ディーゼルエンジンの種類

非常用発電機をエンジン別で分けると、ディーゼルエンジンを搭載したものと、ガスタービンエンジンを搭載したものの2種類に分かれる、と説明しました。

確かに、非常用発電機はこの2つに分かれるのですが、ほとんどの場合はディーゼルエンジンを使った非常用発電機です。
ガスタービン式の非常用発電機は、よほど大きな施設でもない限り、実際にはなかなか見かけません。

ほとんどの施設で採用されているディーゼルエンジン式の非常用発電機ですが、こちらも厳密に分けると、トラック用エンジンと船舶用エンジンがあります。
それぞれの特徴を見てみましょう。

トラック用エンジン

非常用発電機のエンジンには、トラック用に作られたディーゼルエンジンが流用されることがあります。
トラック用エンジンは量産体制が整っていることから、比較的安価で非常用発電機に流用できることが大きなメリットです。
ただし、トラック用には大きなエンジンがないので、小型の非常用発電機にしか使えないことがデメリットです。
また、回転数を上げて出力する形になるため、発電機としてのトルクが小さくなることもデメリットと言えるでしょう。

船舶用エンジン

トラック用エンジンの弱点を克服するエンジンが、船舶用エンジンです。
船舶用エンジンはトルクが大きく、一定の回転数を長時間にわたって維持させる設計になっているので、非常用発電機のエンジンとしては非常に適しています。
非常用発電機のためにあるエンジンと言っても過言ではありません。
もちろん、トラック用エンジンに比べて、船舶用エンジンの価格ははるかに高額になります(数倍)。
そのため、コストとの兼ね合いで購入をためらう方がいるかもしれませんが、災害時の信頼度の高さや安定性を考えれば、トラック用エンジンよりも船舶用エンジンのほうが推奨されるでしょう。

ディーゼルエンジンで使う燃料について

ディーゼルエンジンで使う燃料は、主にA重油と軽油です。
A重油とは、軽油90%に少しの残渣油を混ぜたものです。軽油に近い性質の燃料ですが、軽油よりも粘度が高めですので重油に分類されています。
A重油の他、ディーゼルエンジンには軽油が使われることもあります。
重油も軽油も第4類の危険物に指定されていますので、規制にしたがって正しく取り扱わなければいけません。
ちなみに、ガスタービン式の非常用発電機では、天然ガスなどが燃料に使われています。

非常用発電機を製造している主なメーカー

非常用発電機の設置をお考えの方に向けて、ここでは主な非常用発電機のメーカーをご紹介しましょう。

富士電機

富士電機は、コンパクトサイズから大容量まで、様々な非常用発電機の製造と販売を手掛けています。寒冷地仕様や全天候型の発電機など、特定の地域や環境に対応した製品も提供しております。

川崎重工業

川崎重工業は、日本を代表する産業機械製造メーカーであり、ガスタービン型の非常用発電機「PUシリーズ」が特に知名度が高いです。出力は150kVAから6,000kVAまでと豊富で、20種類以上の製品展開があることが売りです。

デンヨー

デンヨーは、日本市場における発電機のシェア60%以上を有する主要メーカーで、非常用発電機の他に家庭や自動車向けの発電機、さらに環境に優しい都市ガス仕様の非常用発電機も取扱っています。

三友工業

三友工業は小型発電機、ゴム射出成形機、環境保全設備、航空宇宙器具など幅広い製品を手がけているメーカーです。防音・消音装置のノウハウに優れたメーカーで、環境にやさしく災害にも強い性能の高さが強みです。

明電舎

明電舎は、環境に配慮した製品設計が注目されるメーカーで、煙排出量を大幅に抑えたディーゼル型の非常用発電機や静穏設計によるガスタービン型の非常用発電機を販売しています。

ニシハツ

ニシハツでは、「20kVA~1100kVAシリーズ」などの非常用発電機が人気です。消防法に適合しているため特別な発電室を設ける必要がなく、様々な場所に設置できます。また、静かさを重視する顧客の要求に応じて、標準音タイプ(105dB)、低騒音タイプ(85dB)、超低騒音タイプ(75dB)の選択肢を提供しています。

日立製作所

日立製作所は、故障が少なく信頼性の高い家電製品で名高い世界的メーカーであり、非常用発電機ではディーゼル型とガスタービン型の両方を販売しています。「日立サンパワーシリーズ」が有名で、日立製作所の非常用発電機は台湾でも導入されております。

東京電機

東京電機は、1920年の創業以来、豊富な経験とノウハウを活かし、非常用・防災用発電機の設計から製造、設置、メンテナンスまで一貫したサービスを提供する専門会社です。取り扱う全ての製品は、一般社団法人日本内燃力発電設備協会からの認証を取得しています。2020年度納入実績では、関東地区でのシェア第1位、全国でも2位と高い実績を誇ります。

ヤンマー

ヤンマーは、非常用発電機のエンジン製造を担当し、他のメーカーが生産する非常用発電機のエンジン製造を多く手掛けています。2022年には、非常用発電機の運用可能時間を計算するアプリ、「かんたん燃費計算」を新たにリリースしました。

まとめ

  • 非常用発電機は、防災専用、防災および保安兼用、保安専用の3種類に分類される。
  • 防災専用の非常用発電機は、消防法で定められた消火設備に電力を供給するもので、ホテルや病院などに設置される。
  • 防災および保安兼用の非常用発電機は、防災専用の機能に加えて保安用の負荷にも対応できる。
  • 保安専用の非常用発電機は、建物所有者が停電時に電力を維持したい設備に給電するためのもので、BCP対策として重要。
  • エンジン別にはディーゼルエンジン非常用発電機とガスタービンエンジン非常用発電機がある。
  • ディーゼルエンジン非常用発電機は、本体価格や燃料単価が安く、発電効率が良いが、振動や騒音、煙の発生がデメリット。
  • ガスタービンエンジン非常用発電機は、騒音や振動、煙が少ないが、発電効率が低く、燃料単価や本体価格が高い。
  • ディーゼルエンジンはトラック用エンジンと船舶用エンジンがあり、それぞれ特徴が異なる。
  • 非常用発電機を製造している主なメーカーは、富士電機、川崎重工業、デンヨー、三友工業、ダイハツディーゼル、日本車両、明電舎、シーエープラント、カナデン、和晃技研、ヤンマー、ニシハツ、クボタ、オーハツ、日立製作所、東京電機など。

非常用発電機の相談を承っております

平成30年6月1日から、非常用発電機の点検義務(負荷試験もしくは内部観察)が、6年に1度の実施に変更されました。
変更前は1年に1度の負荷試験が必要でした(変更後も1年に1度の負荷試験を選べます)。

ただし、負荷試験や内部観察を6年に1度のパターンを選ぶ場合には、他の5年間、毎年予防的な保全策を実施する必要もあります。

非常用発電機の点検周期や選択肢は、少し複雑です。どの方法が自分たちの設備に合っているのか、分からなくなるかもしれません。

当社、日本負荷試験テクノ株式会社では、非常用発電機の点検を専門的に行っております。
非常用発電機の点検について、ご不明なことやご質問などがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

著者
備瀬元博

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 次長

備瀬元博

発電機の困った!を解決!緊急対応は24時間受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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