非常用発電機は、いざ災害が発生した際に使う設備です。いつ災害が発生するか分からない以上、常に使える状態にしておかなければなりません。
非常用発電機を常に使える状態にするためには、発電機の定期的な点検も重要ですが、燃料の確保や燃料系統の交換なども重要です。
どんなに優れた非常用発電機を設置したとしても、燃料がなかったり、燃料系統が故障していたりしては、災害時にまったく役に立たないからです。
ここでは、非常用発電機の燃料の種類や、災害発生時に備えた燃料の備蓄・調達先の確保、日常的な燃料の交換頻度などについて解説しています。
この記事の目次
非常用発電機に使われる燃料の種類
A重油(LSA重油一種)
A重油は、非常用発電機の燃料として、広く利用されています。非常用発電機の他にも、船舶や農耕機の燃料としても広く利用されています。
重油とは言っても、重油の中ではもっとも粘度が低く(あまりドロドロしていない)、重油というよりも軽油に近い印象です。
軽油(ディーゼル)
おなじみの軽油も、非常用発電機の一般的な燃料として用いられています。
ガソリンは常温でも燃えてしまいますが、軽油は沸点が180~350度で高圧・高温でよく燃える性質ですので、ガソリンに比べてエネルギー効率が良いのが特徴です。
エネルギー効率が良いということは、燃料代が安く済むということでもあります。
重油
重油も非常用発電機の燃料となることはありますが、A重油や軽油に比べると、さほど広く用いられているわけではありません。
褐色または黒褐色で、軽油よりも沸点が高く、かつ粘度も非常に高いのが特徴です。
ガソリン
小型発電機では主にガソリンが燃料として使われますが、大型施設などの非常用発電機でガソリンを燃料とする例は多くありません。
ガソリンを燃料に使った発電機は水分に弱いため、雨や台風の多い地域では、軽油やガスを燃料にした発電機のほうが適しているでしょう。
非常用発電機の機種による燃料の違い
非常用発電機の燃料は、ほとんどがディーゼル軽油かA重油となっています。発電機の機種による燃料の違いは次のとおりです。
- AP25C-AP65C…ディーゼル軽油
- AP95C-AP300C…ディーゼル軽油・A重油
- AP400C-AP500C…ディーゼル軽油・LSA重油
- AY20L-500・625L(H)…ディーゼル軽油・A重油
非常用発電機を使う時の気温によって、燃料の種類が異なることもあります。くわしくは発電機を購入するメーカーにお問い合わせください。
災害時に向けた燃料の備蓄・調達先について
非常用発電機は、災害時に発電できなければ意味がありません。災害時に発電するためには、燃料の備蓄や調達先についても十分に検討しておく必要があります。
燃料の備蓄について
災害時、よく聞く言葉に「72時間の壁」があります。
人命救助のひとつの目安と言われているのですが、この「72時間の壁」は災害時の色々なシーンに適用されて、非常用発電装置の燃料の持ち時間にも言われることがあります。
最低でも72時間分の燃料を備蓄しておくべきだ、という考え方です。
ただし、非常用発電装置の燃料は時間とともに劣化していくため、満タンにした燃料をいつまでも備蓄し続けることはできません。定期的に入れ替えをすることが必要です。
例えばA重油に推奨されている使用期限は約3か月です。3か月を目安に、新しい燃料への入れ替えを行うのが望ましいでしょう。災害時への備えとしては、他の燃料との併用も有効です。
設置している非常用発電機のメーカーに問い合わせ、燃料の備蓄や入れ替えに関する詳細を確認してみましょう。
燃料の調達先について
「72時間の壁」は災害時の大事な目安ですが、実際には、より長時間にわたって非常用発電機を稼働させなければ不便なこともあるでしょう。
そのような時に備え、災害時でも燃料を調達できるルートを確保しておくことが重要です。
調達ルートの選定で大事なポイントは、災害時でも十分な燃料の在庫があるかどうか、燃料の配送スタッフを確保しているかどうか、そもそも災害時に燃料配達をやってくれるかどうかなどです。
ただし、大災害が発生した際には、自社だけではなく地域住民も給油所へ燃料を求めて殺到します。そのような中で非常用発電機用の燃料を調達するためには、何らかの特別な対策をとっておいたほうが良いでしょう。
例えば、あらかじめ給油所と災害時協定(優先給油を約束する協定など)を結んでおいたり、災害が発生していない平常時から非常時に備えた燃料の代金を支払っておいたりなどです。
消防法の規制にひっかかり、多くの燃料を備蓄できない場合には、災害時の燃料調達ルートをしっかりと確保しておきましょう。
燃料の交換頻度
燃料は6年ごとに交換しましょう。
実際のところ、燃料自体は6年以上たっても使えます。ただし、燃料は空気に触れているとだんだん酸化が進んでしまい、その影響で燃料系統が故障する恐れがあります。
燃料系統の故障を防ぐという意味で、燃料を6年ごとに交換するのが望ましい、ということです。
理想を言えば1年に1回の頻度で燃料を交換したいろころですが、コストの問題もあることから、最長でも6年に1度は交換しましょう。
ちなみに、酸化が進んだ燃料を交換せずに備蓄し続けると、燃料タンクの防腐効果や防錆効果が下がり、最悪の場合、燃料タンクの底に穴が空いてしまうことがあります。
エンジンオイル・オイルフィルターの交換頻度
エンジンオイルやオイルフィルターは、1~2年ごとに交換しましょう。
エンジンオイルとは、エンジンの潤滑油となる油のこと、オイルフィルターとは、エンジンオイルの中の異物を除去する部品のことです。
エンジンを正常に動かすための車の両輪のようなものなので、時期が来たら一緒に交換しましょう。
燃料と同じように、エンジンオイルも時間とともに酸化していきます。
酸化したエンジンオイルを使い続けると、ピストンやライナ内面などに細かい傷を付けてしまい、最悪の場合、エンジンに重大な損傷を与えることがあります。
プライミングポンプの交換頻度
プライミングポンプは、12年ごとに交換しましょう。
プライミングポンプとは、エンジンを始動させる直前にオイルを圧送するポンプのことで、機器の内部に油膜を行きわたらせるための部品です。
非常用発電機は日常的に使うものではないため、いざ始動させる時点では、機器の内部に油膜がほとんど残っていません。
油膜が残っていない状態で急にエンジンをかけると、シリンダーやピストンリングなどに傷が付き、発電機が故障してしまうこともあるので注意しましょう。
非常用発電機を設置する時には「騒音」と「排気ガス」にも注意
非常用発電機の設置を考える際には、機種や燃料などに注意が集まりがちですが、他にも「騒音」と「排気ガス」に留意しながら設置計画を検討したほうが良いでしょう。
騒音について
発電機を設置する際には、騒音や公害に関する規制を守る必要があります。ただし、災害時に非常用発電機を使用するにあたっては、ほとんどの地域で、例外的に規制が外されることでしょう。
そのため、災害時に騒音規制を破ったとしても罰せられる可能性は極めて低いのですが、たとえ罰せられなくても非常用発電機から騒音が出ることは確かです。
近隣が住宅街の場合には、災害時とは言え発電機の運転音がクレームになりかねません。
非常用発電機を設置する際には、騒音に関して慎重に計画を立てるべきでしょう。
排気ガスについて
大型の非常用発電機を運転させると、大量の黒煙が発生することがあります。運転時の風向きによっては、近隣の住宅街へ煙が流れてしまうかもしれません。
あるいは、煙を火災と勘違いした住民から消防へ連絡が入るかもしれません。それらの事態を避けるためには、排気ガスに関しても慎重に計画を立てるべきでしょう。
例えば、発電機を設置する際、煙の排出が近隣に目立たないように設計する方法があります。または、黒煙の発生を抑える電子ガバナという装置を付ける方法もあります。
導入する予定の非常用発電機の特性に応じて、適切な排気ガス対策を計画しましょう。
非常用発電機の点検の相談を承っております
非常用発電機の燃料の種類、災害発生時に備えた燃料の備蓄・調達先の確保、日常的な燃料の交換頻度などについて解説しました。
非常用発電機については、平成30年6月1日から点検義務の方法が変更となりました。
いくつかの選択肢から点検方法を選べるようになりましたが、どの方法が自社に適しているのか分からない、という方もいらっしゃるでしょう。
当社、日本負荷試験テクノ株式会社は、非常用発電機の負荷試験を専門的に行っている会社です。
非常用発電機の点検に関し、ご不明な点やご質問などがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。