非常用発電機の主なメーカー、メーカーや負荷試験事業者の選び方、非常用発電機の点検に関する基本などについてご紹介しています。
この記事の目次
非常用発電機の主なメーカー10社
非常用発電機を製造・販売している主なメーカーを10社ほどご紹介します。製品の詳細については、各社の公式HPをご確認ください。
川崎重工業株式会社
1896年に設立された老舗の重工業メーカー。
非常用発電機「PUシリーズ」が知られ、停電や災害に備えた産業用ガスタービン発電装置として全国に広く導入されています。製品ラインナップは出力150kVAから6,000kVAまで20種類以上。
ヤンマー
クボタに次ぐ農業機械の大手メーカー。
非常用発電機としては、ラジエーター冷却方式と放水循環冷却方式の2シリーズを用意。非常用発電機の他にも、常用発電機や防災設備用発電機、太陽光発電機など、発電用の各種機器を製造しています。
富士電機株式会社
ディーゼルエンジンを採用したコンパクトなタイプから1000KVAの大容量まで、多彩な非常用発電機を展開。寒冷地仕様や全天候対応仕様などの災害対策用の発電機にも積極的です。
デンヨー株式会社
非常用発電機、エンジンコンプレッサー、ガス発電機、負荷試験機などに特化した機械製品を展開。
工業用のみならず、家庭用や車用など、幅広い用途に向けた発電機を製造しています。発電機の国内シェアは60%以上を誇る発電機業界におけるリーディングカンパニーです。
ダイハツディーゼル
ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンによる非常用発電を製造。
地下室でや屋外でも設置可能な汎用性の高さを特徴とし、病院や情報通信会社、その他一般産業界において幅広く導入されています。エンジンの信頼性に定評あり。
株式会社明電舎
環境配慮型の製品メーカーとして知られ、非常用発電機においても黒煙排出量を大幅に低減させた製品をリリース。
ガスタービン発電機も手がけ、全国の病院や大型施設などで広く導入されています。
株式会社カナデン
三菱電機の発電・制御装置を組み入れた非常用発電機を販売。
発電機単体だけではなく、受変電システムや中央監視設備などと連携した総合的な商用電源供給システムも提案しています。
ニシハツ株式会社
非常用発電機や非常電源などを得意とするメーカー。
「20kVA~1100kVAシリーズ」などが知られています。消防法に準拠して製造された非常用発電機なので、特別な発電室を設ける必要はなく、どこにでも設置が可能です。
クボタ
農業機器の国内トップメーカー。
耐久性で定評のあるディーゼルエンジンを使用した非常用発電機を各種取り揃えています。クボタのディーゼルエンジンは、他社の非常用発電機にも広く採用されています。
株式会社日立製作所
白物家電で有名な日立製作所。電気系統の故障が少ないことを強みとし、非常用発電機市場にも積極的に製品をリリースしています。
ガスタービン発電機とディーゼル発電機の両方を手がけていますが、中でも特に「日立サンワパーシリーズ」が有名です。
非常用発電機メーカーと負荷試験業者の選び方
一定の基準を満たした施設においては、非常用発電機を導入後、定期的な負荷試験などを受ける義務があります。そのため、非常用発電機の導入に際しては、メーカーや機種を厳選するとともに、負荷試験などの業者もしっかりと比較して選ぶことが必要です。
以下、非常用発電機メーカーを導入する際や負荷試験業者の選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。
設置基準を満たしたメーカー・機種を選ぶ
防災用としての非常用発電機を導入する場合には、「防災認定品」の認証マークを取得しているかどうかを確認する必要があります。
認証マークを取得していなければ、非常用発電機としての設置基準を満たしません。
所轄消防に届け出る必要がある
防災を目的に据付型の非常用発電機を設置する場合には、所轄の消防署へ設置する旨を届け出る必要があります。
また、設置完了後には消防の立ち合いによるチェックも受けなければなりません。
非常用発電機を設置する場所の工事が必要な場合もある
据付型の非常用発電機を導入する場合には、本体の導入に加えて付帯工事が必要となります。
また、はじめて非常用発電機を増設したり、新たな非常用発電機に更新したりする場合には、本体を乗せるための土台工事が必要となることもあります。
アフターサービスがしっかりしたメーカーを選ぶ
非常用電源装置には厳格な基準が求められているため、どのメーカーの製品を選んだとしても、稼働当初に大きな性能差が生じることはありません。
ただし、いったん導入した非常用電源装置は長い期間使用し続けるため、性能維持のためにはアフターサービス・メンテナンスのしっかりしたメーカーを選ぶ必要があります。
また、いかに当初のアフターサービスが充実していたとしても、シェアの低いメーカーは将来的に市場を撤退する恐れがある点も考慮しておいたほうが良いでしょう。
負荷試験業者選びでは模擬負荷試験と実負荷試験の対応を確認
非常用発電機の定期的な負荷試験には、模擬負荷試験と実負荷試験の2種類があります。
法令上はどちらを選んでも問題ありませんが、実負荷試験を選んだ場合、試験当日に施設が一時的に停電します。病院や商業施設など、停電させられない施設においては、停電のない模擬負荷試験を行える業者を選ぶ必要があるでしょう。
非常用発電機の寿命は約20年
非常用発電機は有事にのみ稼働させる設備ですが、普段は使わない設備とは言え機械である以上、やがて耐用年数(寿命)が訪れることは避けられません。
結論から言うと、非常用発電機の寿命(導入から入れ替えまでの期間)は約20年。永遠に使える設備ではないものの、20年という長期間にわたって使用するものだからこそ、メーカー選びには慎重になるべきでしょう。
非常用発電機の寿命について、少し掘り下げてご説明します。
製造から約12~15年後に制御基板の交換が推奨される
非常用発電機の構成要素は、大きく分けて「エンジン」「発電モーター」「制御」の3種類。これらのうち「制御」は、停電の感知から発電機を始動させたり、復旧の感知から発電機を停止させたりなど、いわば非常用発電機の頭脳を担っている部分になります。
この「制御」に不具合が発生するタイミングは、製造から約15~20年。
不具合が発生してから制御基板を交換するわけにはいかないので、一般的には製造から約12~15年を目安に制御基盤の交換をするよう推奨されています。
制御基板を交換せず20年で寿命を迎えることも
制御基板の製造期間はメーカーによって異なるものの、おおむね15~20年で製造は終了します。
もし非常用発電機を導入してから20年後に制御基板を交換しようとしても、メーカーでは製造終了している可能性が高く、制御基板を交換できない可能性があります。その時点で非常用発電機が故障していれば、もはや「直せない」かもしれません。
機器自体は約25年の耐久性があると言われる非常用発電機ですが、事実上の寿命が20年となってしまう理由は、この制御基盤の製造終了にあります。
製造から12~15年後の制御基板交換が推奨されると説明しましたが、そのタイミングで制御基板を交換していれば、メーカーの製造終了にかかわらず20年以上稼働している可能性があるでしょう。
20年間にわたり故障しない信頼できるメーカーを選ぶ
非常用発電機の寿命は約20年。ただし機械である以上、20年を待たずして故障や不具合が生じてしまうリスクもあります。
非常用発電機を導入する際には、期待寿命となる20年は問題なく稼働する機種を選びたいものです。
目先の本体価格などに左右されず、長い目で見て市場シェアの高い信頼できるメーカーの機種を選ぶようオススメします。
非常用発電機の点検
非常用発電機の点検には、電気事業法に基づいて行われる定期点検と、消防法に基づいて行われる定期点検・負荷試験などがあります。
それぞれの概要を確認しておきましょう。
電気事業法に基づく定期点検
電気事業法に基づき、電気系統を稼働させた状態で5分程度の無負荷運転を行います。
消防法に基づく定期点検
消防法に基づき、半年に一度の目視点検および年に一度の無負荷運転を行います。
消防法に基づく負荷試験運転など
消防法に基づく非常用発電機の点検について、上記の簡素な定期点検に加え、発電機の状態を詳細にチェックする負荷運転試験などを受ける必要があります。
以下3種類の方法のうち、いずれを選択しても構いません。
- 予防的保全策を毎年+負荷試験を6年に1回
- 予防的保全策を毎年+内部観察を6年に1回
- 負荷試験を毎年
かつては「負荷試験を毎年」のみしか選択肢がありませんでしたが、平成30年の消防法改正により、これら3種類から選択できるようになりました。
非常用発電機に関する基本用語
非常用自家発電設備の選定で登場する専門用語「小出力発電設備」「保安電源」、非常用発電機の種類として登場する「エンジン発電装置」「ガスタービン発電装置」について解説します。
小出力発電設備について
小出力発電設備とは、出力が小さめで安全性の高い発電設備を言います。具体的には、次の5種類に該当するものが省電力発電設備と定義されます。
- 太陽電池発電設備で、かつ出力が50kW未満のもの
- 風力発電設備で、かつ出力20kW未満のもの
- 水力発電設備で、かつ出力20kW未満のもの(ダムを伴うものを除く)
- 内燃力を原動力とする火力発電設備で、かつ出力10kW未満のもの
- 燃料電池発電設備(PEFC又はSOFC)で、かつ出力10kW未満のもの
なお、同一施設内に設置する個々の小出力発電設備が電気的に接続された際、出力が50kW以上となる場合には、小出力発電設備とはなりません。
保安電源について
防災用の非常用発電装置とは別に、「保安電源」と定義される非常用電気設備もあります。
保安電源とは、商用電力が停電となった際に電力を供給する電源です。企業のコンピューター設備や病院の各種設備など、常時電源供給が必要な対象に対し、保安電源が電源を供給します。
エンジン発電装置について
エンジン発電装置とは、ディーゼル機関を動力源とし、交流発電機をディーゼル機関に直結させて発電させる装置のこと。非常用発電機として広く製造・導入されています。
起動までの時間が短く、かつ熱効率が高いことも特徴です。
ただし、排気の煙や稼働時の騒音・振動など、いくつかのデメリットもあります。
ガスタービン発電装置について
ガスタービン発電装置とは、ガスの燃焼によってタービンを回転させて発電する装置のこと。非常用発電機においては空冷式を採用しているため、凍結・断水でタービンが故障する恐れはありません。
装置の小型化が可能で、かつ騒音や振動が少ないことも特徴。
ただし、燃料消費が高いことなどのデメリットもあります。