非常用発電機の負荷試験:義務と免除の基準を解説

非常用発電機

非常用発電機の負荷試験とは?その重要性

非常用発電機は、予期せぬ事故や災害時に電力供給が停止した場合に、重要な電力源として機能します。業務用から家庭用まで様々な種類があります。またBCP(事業継続計画)の一環として72時間という基準があり総務省が人命救助の観点から災害や事故への備えとして、またBCP(事業継続計画)の一環としても重要です。

負荷試験の目的と義務

負荷試験は、非常用発電機が実際の動作環境に近い状態で適切に機能するかを確認するために行われます。この試験では、通常の30%以上の負荷をかけ、非常用発電機の性能を確認します。負荷試験により、無負荷運転では発見できない不具合を事前に発見し、重大な故障を未然に防ぐことができます。消防法では、非常用発電機の負荷運転の点検を義務付けており、消火活動に必要な設備を動かすための出力が実際に可能かを確認するための重要な点検です。不十分な点検や発電機の動作不良は、二次災害を引き起こし、被害の拡大につながる可能性があるため、施設の安全管理としても重要です。

負荷試験の義務化:消防法に基づく規定

平成30年6月1日に行われた消防法の改正により、非常用発電機の負荷試験に関する法令が大きく変更されました。この改正による主なポイントは以下のとおりです。

改正ポイント

1. 運転性能に係る点検の見直し: 総合点検における運転性能の点検方法が、従来の負荷運転から内部観察等へと拡大されました。これは、特定の環境下で負荷試験を実施することが困難なケースに対応するための変更です。

2. 負荷運転の実施周期の見直し: 改正前は、1年に1回の総合点検時に負荷運転が必要でしたが、予防的な保全策が講じられている場合は、点検周期を6年に延長することが可能になりました。これにより、負荷試験の頻度が大幅に減少し、メンテナンスの負担が軽減されます。

3. 対象の見直し: ガスタービンを原動力とする自家発電設備については、負荷運転が不要となりました。ガスタービン式発電機はカーボンの蓄積が発生しない構造を持つため、負荷試験の必要がなくなったのです。

4. 換気性能の点検の見直し: 改正前は負荷運転時に換気性能の点検を行っていましたが、改正後は無負荷運転時に換気性能を点検するように変更されました。これは室内温度が外気温に左右されるため、より適切な点検方法への変更と言えます。

参照元:総務省消防庁

義務化の背景と目的

負荷試験の義務化は、非常用発電機の実際の動作環境における性能を確保するために重要です。これにより、災害時などの非常時に発電機が確実に機能することを保証し、建物や施設の安全を確保することが目的です。しかし、毎年の負荷試験は多大な労力とコストを要するため、予防的な保全策を施した場合の点検周期の延長が導入されました。これにより、施設管理者は適切なメンテナンスを行うことで、負荷試験の頻度を減らし、全体的な管理コストを削減できるようになりました。

改正によって、非常用発電機の点検とメンテナンスの負担が軽減され、より効率的な管理が可能となりました。また、災害時の発電機の信頼性を確保しながら、経済的な管理が可能となることが重要な改正点です。

負荷試験の免除基準とその条件

6年間の免除条件

平成30年の消防法改正により、非常用発電機の負荷試験の点検周期は、特定の条件を満たす場合に6年に1度に延長されました。この改正は、以下の2つの主要な観点に基づいています。

1. 負荷運転で確認した不具合が発生する部品の推奨交換年数が6年以上であること: この条件は、部品の耐久性と信頼性に基づいています。

2. 無負荷運転を6年間実施しても、運転性能に支障となる未燃焼燃料が蓄積されないこと: これは、非常用発電機が長期間にわたって安定した性能を維持する能力を持っていることを示しています。

予防的保全策とは?

予防的保全策は、消防予第373号にて規定された非常用発電機の保全方法です。この保全策を実施することで、負荷運転または内部観察の実施が免除されます。具体的な点検項目は以下の通りです。

1. 確認すべき項目: 予熱栓、点火栓、冷却水ヒーター、プライミングポンプなど、発電機の主要な機能部分の正常な作動や状態を確認します。

2. 交換すべき部品: 潤滑油、冷却水、燃料フィルター、潤滑油フィルター、ファン駆動用Vベルト、冷却水用等のゴムホース、燃料、冷却水、潤滑油、給気、排気系統や外箱等に用いられるシール材、始動用の蓄電池などの消耗部品を、製造者が設定する推奨交換期間内に交換します。

参照元:総務省消防庁

非常用発電機の負荷試験と法改正の概要

非常用発電機の負荷試験は、予期せぬ事故や災害時に備え、発電機が実際の環境下で適切に機能することを確認するための重要な点検作業です。平成30年の消防法改正により、総合点検の方法が見直され、負荷運転の実施周期についても変更がありました。特定条件下で負荷試験が免除される場合があり、予防的保全策を施すことでメンテナンスコストの削減が期待できるようになりました。

著者
能又浩一

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 課長

能又浩一

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