消防法や電気事業法、建築基準法では、非常用発電機の機能維持・安全性確保に関する点検の基準が定められています。
ここでは、それぞれの法律で定められた点検義務の内容、消防法改正に伴う非常用発電機の点検方法について解説します。
この記事の目次
消防法による点検内容
延べ床面積1,000㎡以上の特定防火対象物については、消防法により非常用発電機の点検が義務付けられています。
非常時にスプリンクラーなどの消防設備を確実に作動させるための電力源になることから、各種消防設備とあわせて非常用発電機も点検対象となっています。
点検内容は6か月ごとに行われる「機器点検」と、1年ごとに行われる「総合点検」の2つ。それぞれの点検基準を消防庁のリーフレットから引用します。
機器点検
- 設置状況
- 表示
- 自家発電装置
- 始動装置
- 制御装置
- 保護装置
- 計器類
- 燃料容器等
- 冷却水タンク
- 排気筒
- 配管
- 結線接続
- 接地
- 始動性能
- 運転性能
- 停止性能
- 耐震措置
- 予備品等
総合点検
- 接地抵抗
- 絶縁抵抗
- 自家発電装置の接続部
- 始動装置
- 保護装置
- 負荷運転または内部観察等
- 切替性能
負荷試験に関する点検方法の改正
平成30年6月から、点検基準の一部が改正されました。
中でも上記「総合点検」における「負荷運転または内部観察等」は大きな改正となったため、非常用発電機の設置者はよく理解しておく必要があります。
改正後の「負荷運転または内部観察等」の内容を確認しておきましょう。
- 改正前の点検方法は「負荷運転のみ」とされていましたが、改正後は「負荷運転または内部観察等」となりました。
- 点検周期について、改正前は「1年に1回」とされていましたが、改正後は「予防的保全策が講じられている場合は6年に1回」となりました。
- 点検対象について、改正前は「すべての自家は圧電設備に負荷運転が必要」とされていましたが、改正後は「原動機にガスタービンを用いる自家発電設備の負荷運転は不要」となりました。
- 換気性能点検について、改正前は「負荷運転時に実施」とされていましたが、改正後は「無負荷運転時に実施」となりました。
「内部観察等」および「予防的保全策」の内容については、以下の消防庁のリーフレットをご参照ください。
電気事業法による点検内容
電気事業法では、常用であるか非常用であるかを問わず、すべての発電機を電気工作物とし、常に適正な状態で運転できるよう発電機の設置者に対し保安基準への適合を義務付けています。
実施される点検は、発電機などの外観を確認する「月次点検」と、より詳細に確認する「年次点検」の2種類。年次点検の点検内容は、主に次の通りです。
- 自動起動・自動停止機能における異常の有無
- 内部蓄電池からの漏出の有無
- 部品の接続箇所、地面との設置面、接続部分の緩みなど
- 接続と絶縁抵抗値の測定
- 約5分の空ぶかしエンジン試運転、など
点検は、電気主任技術者または電気管理技術者が行います。
なお、同法の対象となる発電機は10キロワット以上のディーゼルエンジン型発電機、および、すべてのガスタービン型発電機です。
建築基準法による点検内容
建築基準法では、建築物や建築設備、敷地などを常に適法な状態で維持するよう所有者に義務付けています。
非常用発電機も建築設備の一部として、建築基準法にのっとった維持・管理が求められます。
点検項目は、非常用発電機を通じた非常用照明の異常の有無、蓄電池触媒栓の有効期限・液漏れなどの確認などです。
非常用照明の点検は建物全体を対象とするため、電球などをすべて取り付けた状態で点検しなければなりません。また、点検実施後の保守報告書の作成も義務とされています。
点検は、一級建築士、二級建築士、建築設備検査員、昇降機検査員、防火設備検査員などの有資格者が行います。
【まとめ】日常的な保守・メンテナンスも大事
消防法、電気事業法、建築基準法における非常用発電機の点検基準や点検内容などについて解説しました。
ご紹介した点検は、大きな災害などが発生した際に、非常用発電機を正しく安全に運転させるために必要な最低限の点検です。法令で定められた義務なので、必ず各点検を受けましょう。
また、非常時にスムーズかつ安全に非常用発電機を稼働させるためには、これらの点検に加えて、日常的な保守・メンテナンスも大切です。
エンジンが正常に稼働しているかどうか、異音はないかなどなど、非常用発電機の設置者は定期的な自主点検を心がけましょう。
法定の点検時以外にも、異常や違和感があれば速やかに専門会社へ相談するよう推奨します。