マンションへの非常用発電機の設置義務について

非常用発電機

一定の要件に該当する建築物について、消防法や建築基準法では非常用発電機の設置を義務付けています。要件に該当すれば、建築物がマンションであっても非常用発電機を設置しなければなりません。

ここでは、消防法と建築基準法におけるマンションでの非常用発電機の設置義務、およびマンションに非常用発電機が必要とされる理由について確認します。

消防法におけるマンションの非常用発電機設置義務

消防法では、不特定多数の人が出入りする施設で延べ面積1,000㎡超の特定防火対象物に対し、非常用発電機の設置を義務付けています。

設置義務の対象となる主な建築物

設置義務の対象となる主な施設は、マンション、商業施設、病院、工場、高齢者福祉施設、オフィス、ホテル、学校など。これら建築物のうち、上記の要件に該当する場合には、必ず非常用発電機を設置しなければなりません。

消防法における非常用発電機設置の趣旨

停電発生時、スプリンクラーや消火栓設備、火災報知器などの消防設備が正常に作動することを趣旨に非常用発電機の設置規定が設けられています。

建築基準法におけるマンションの非常用発電機設置義務

建築基準法では、高さ31m超の建築物(政令で定める建築物を除く)や不特定多数の人が出入りする特殊建築物、延べ面積が1,000㎡超の建築物などに対し、必要な建築設備の一環として非常用発電機を示しています。

設置義務の対象となる主な建築物

設置義務の対象となる主な施設は、マンション、ホテル、旅館、高齢者福祉施設、映画館、病院、百貨店、学校など。これら建築物のうち、上記の要件に該当する場合には、非常用発電機の設置が義務となります。

建築基準法における非常用発電機設置の趣旨

消防法※1・建築基準法※2では、特定の建物に関して、常用電源が停電した場合、非常用の照明装置、昇降機、排煙設備を動作させる為の予備電源(非常電源)、または自家発電設備の設置が義務づけられています。

【参考】
※1 消防法第17条
※2 建築基準法第2条第3号

一般社団法人日本内燃力発電設備協会
▽自家発Q&A 38 建築基準法による自家発電設備の設置等に関する規制
▽自家発Q&A 39 建築基準法による自家発電設備の設置等に関する規制2

マンションに非常用発電機が必要とされる主な理由

マンションに非常用発電機が必要とされる主な理由について、消防法や建築基準法の趣旨に一般的な視点も交えて考えてみましょう。

高層建築物(タワーマンションなど)の非常用エレベーター義務化

建築基準法では、高さ31mを超える一部の高層建築物※1に、非常用昇降機(エレベーター)設置が義務化※2されており、非常用昇降機の予備電源も義務化※3されています。

【参考】
※1 消防法第8条の2で定める、消防法上の高層建築物
※2 建築基準法第34条第2項
※3 建築基準法第129条の13の3 第10項

停電時における給水設備の維持

マンションの各戸への給水には複数の方法がありますが、それらのうち、電気を使用する増圧直結式(水圧ポンプによる加圧で上層階に給水する仕組み)を採用している場合、停電時に給水ができなくなります。

建築基準法や消防法では、停電時における給水設備の維持は、義務化されていませんが、タワーマンションなどでは、非常用の大型ディーゼル発電機を設置し、給水ポンプを始め、非常用エレベーターや共用廊下の保安照明など、数日間に渡り、マンション住人の生活を維持できる設備を備えるケースが多いようです。

【参考】
▽ベイズ タワー&ガーデン|防災
▽国土交通省:建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン

高層建築物における非常用発電機の浸水対策について

東日本台風(令和元年)に伴う大雨の影響により、首都圏の高層マンションの地下部分に設置されていた高圧変電設備が浸水被害を受け、一定期間、当該高層マンションが停電となりライフラインが使用不能となる事態が発生しました。

このような事態を未然に防ぐため、国土交通省と経済産業省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を策定(令和2年6月19日公表)。ガイドラインを受け、各所の高層建築物において非常用発電機の浸水リスクを低減するための具体的な取り組みが行われています。

高層マンションにおける取組事例

東京都多摩市にある地上33階・地下1階の高層マンション。多摩川に隣接した立地であることから、当初は地下1階への設置を計画していた電気設備・給水設備について、洪水ハザードマップでの最大浸水深を超える高さに配置変更しました。

電気設備の配置変更に伴い、非常用発電機の配置も変更。当初は地下ピット階に配置予定でしたが、ハザードマップで浸水被害が想定されていない2階へ配置変更しました。

【参考】
▽経済産業省|自家用電気工作物における浸水対策の取組事例について
▽国土交通省|建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン

【まとめ】設置だけではなく定期的な点検も義務

自然災害などの影響でマンションに停電が発生した際、電源が復旧するまでの間、マンションのライフラインの多くは使用不能となります。使用不能となった際の生活への影響は、当記事でご紹介した通りです。

一定の要件に該当するマンションには、消防用や建築基準法の規定により非常用発電機の設置が義務付けられていますが、設置のみが義務とされているのではありません。停電発生時、非常用発電機が正常に作動するよう、定期的に非常用発電機の状態を点検することも義務付けられています(機器点検・総合点検、負荷試験など)。

非常事態が発生した際、マンションの住人に混乱が起こらないよう、非常用発電機の定期的な点検は非常に大事な項目と位置づけられています。

著者
能又浩一

日本負荷試験テクノ株式会社

営業部 課長

能又浩一

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