東日本大震災や熊本地震などはもとより、近年は大型台風や豪雨などの影響による大災害が、日本各地で発生しています。
これら大災害に直面した際でも企業が中核事業の継続を図れるよう、政府ではBCP対策の積極的な推進を啓蒙中。中でも特に重要な対策の1つが、非常用発電機の設置と言われています。
ここでは、国内で実際に発生した長期間停電の事例、停電による企業活動への影響(非常用発電機の重要性)、停電の一因となる自然災害の発生状況などについて解説しています。
この記事の目次
災害による長期間停電は他人事でない
自然災害を原因とした長期間停電の事例として、多くの方が思い浮かべる事例が東日本大震災でしょう。いわゆる計画停電も実行されるなど、東北以外の場所でも広く停電の影響を受けた事例でした。
しかし、東日本大震災のような大規模停電とはタイプが異なるものの、同様に長期間にわたる長期間の停電事例は、国内でたびたび発生しています。近年では、次のような事例が挙げられるでしょう。
- 西日本豪雨(2018年6月18日)…最大1週間の停電
- 九州で発生した豪雨(2019年8月27日)…最大15時間の停電
- 台風15号(2019年9月5日)…最大3週間の停電
- 台風19号(2019年10月6日)…最大2週間の停電
- 九州で発生した豪雨(2020年7月3日)…最大5日間の停電
また、大規模災害を原因とした停電以外にも、毎日のように日本の多くの場所で停電が発生しています。
例えば、東京電力の公式HPでは毎日の停電発生状況を公表していますが、本稿を執筆中の2023年8月22日17:30現在、同日の停電発生状況は次の通りとなっています。
11:28…設備トラブルにより約340軒が停電(埼玉県さいたま市)
11:41…設備の作業ミスにより約940軒が停電(群馬県安中市)
11:44…原因不明により約710軒が停電(埼玉県朝霞市)
13:06…雷の影響により約670軒が停電(神奈川県川崎市)
16:05…設備への樹木等の接触により約120軒が停電(千葉県野田市)
16:46…雷の影響により約860軒が停電(埼玉県さいたま市)
16:47…原因不明により10軒未満が停電(埼玉県さいたま市)
16:47…原因不明により10軒未満が停電(埼玉県さいたま市)
16:47…原因不明による約860軒が停電(埼玉県春日部市)
17:17…原因不明により10軒未満が停電(埼玉県入間市)
17:17…原因不明により10軒未満が停電(埼玉県所沢市)
明らかな自然災害が発生していなくても、停電は、いつでもどこでも発生する可能性があります。
企業で停電が発生すると何が困るのか?非常用発電機の重要性
上記のような停電が営業中に発生した場合、企業活動にはどのような影響が生じるのでしょうか?以下に主な影響をご紹介しますが、これら影響を見れば、非常用発電機の重要性を十分に理解できるでしょう。
生産ラインの停止
各種機械の製造ラインや食品等の生産ラインが停止。業務がストップします。
消防設備の不稼働
電力を要する消防設備を設置している場合、消防設備が稼働せず火災による延焼が広がる恐れもあります。
冷蔵庫・冷凍庫の停止
冷蔵庫・冷凍庫が停止し、冷蔵保管・冷凍保管の必要な商品が劣化します。
通信困難
電力不足の影響等で通信が困難となり、従業員への的確な指示や従業員の安否確認、取引先との連絡ができなくなる可能性もあります。
パソコンのシャットダウン
バッテリーを搭載していないデスクトップパソコンの場合は作業ができなくなる可能性があります。
ローカルに保存予定だった重要なデータが消滅するかもしれません。
照明のダウン
照明がダウンし、場所によっては日中にも関わらず屋内が真っ暗になる可能性があります。人の多く集まる施設では混乱が生じるかもしれません。
エレベーター・エスカレーターの停止
エレベーターやエスカレーターが停止し、施設内での上下移動が非効率になる可能性もあります。
冷暖房の停止
冷暖房が停止し、屋内環境が悪化します。真夏に冷房が停止すれば、熱中症を発症する恐れがあるので危険です。
トイレを使用できない
電力を必要とする水洗トイレ(タンクレストイレなど)を設置している場合、トイレを使用できなくなる恐れがあります。
医療機器の停止
医療機関や介護施設等が長期間にわたって停電すれば、人工呼吸器などの医療機器が停止する恐れもあります。
これらの緊急事態に際し、可能な限り被害を抑えるための設備が非常用発電機。災害拠点病院や介護施設などではBCP策定が義務付けられていますが、それら以外の施設においても、非常用発電機の設置をはじめとしたBCPの策定は急務と言えます。
停電の大きな要因となる自然災害は増えている
「昔に比べて自然災害が増えてきた」という感覚をお持ちの方もいるかもしれませんが、この感覚は錯覚ではありません。実際にデータ上でも、近年の日本における自然災害の発生件数は増加しています。
「国土交通白書2020」(国土交通省)から、災害発生件数に関する同省のコメントを引用します。
大雨や短時間強雨の発生推移
我が国では、洪水や土砂災害を引き起こす大雨や短時間強雨の回数が増加している。大雨について、日降水量が200mm以上となる年間の日数を「1901年から1930年」と「1990年から2019年」で比較すると、直近の30年間は約1.7倍の日数となっており、長期的に増加している。また短時間強雨について、1時間降水量が50mm以上となる年間の回数を「1976年から1985年」と「2010年から2019年」で比較すると、直近の10年間は約1.4倍の発生回数となっており、同様に長期的に増加している。
引用元:国土交通省|国土交通白書2020
土砂災害の発生状況
雨の降り方に関連して、土砂災害の発生回数も近年増加傾向にある。2018年(平成30年)は過去最多の3,459件、2019年も1,996件と非常に多くの土砂災害が発生している。
引用元:国土交通省|国土交通白書2020
国内での自然災害発生件数が増えている背景として、国土交通省では日本特有の国土条件等に加え、地球温暖化の影響も挙げています。
背景が何であれ、自然災害の発生件数が増えていることは事実。自然災害の発生件数は、概ね停電の発生件数に比例するのではないでしょうか。
【まとめ】有効かつ現実的な手段が非常用発電機の設置
大規模な自然災害等が原因で停電になると、停電期間が2~3週間に及ぶこともあります。どのような業種・企業であれ、停電が長期間に及べば、大なり小なり企業活動に影響が生じるでしょう。医療機関や介護施設などでは、長期間停電が利用者の命に直結する可能性もあります。
長期間停電に対する有効かつ現実的な対策は、現状、非常用発電機の設置しかありません。緊急事態に直面しても中核事業を継続させられるよう、一刻も早い非常用発電機の設置を小稿は推奨します。